【大家さんへ】~空室をあきらめないで、視点を変えて付加価値を~
築年数が経過している長期間空室だったアパートの一室が、リノベーションにより生まれ変わり、価値(家賃)が上がって入居者が決まりました。リノベーションを通して見えてきた古いアパートが選ばれる理由とは。
普通のリフォームでは選ばれない時代
南向きで陽当りが良くて住環境も良いのに数年間空室のままのお部屋。前入居者が退去してからリフォームはされていません。
「お金をかけてリフォームしても決まるかどうか分からないし。」
そう言って何もされないままのお部屋が二宮町内には多く存在します。その通りだと思います。仮に壁紙を張替たり、畳を新しくしたり、クリーニングをしたとしても、築年数が経過したアパートは簡単には選ばれなくなっています。なぜなら、新築アパートが次々と建設されているからです。
新築には敵わない、であれば視点を変える
新築アパートの設備仕様は古いアパートが真似したって敵いっこない事は分かると思います。であれば、新築・築浅アパートには無い物だけをピックアップして、オンリーワンのお部屋を作れば良いのです。選ばれる理由を考えます。
今回、大家さんの承諾を得て、リノベーションをさせて頂く事になりました。もちろん採算が合わなければ意味がありませんので、限られた予算内での実施です。
依頼する人は超重要
お客様に喜ばれる「特別なお部屋」に変えるには、それを表現出来るセンスある職人さんに依頼する事が絶対です。同じ金額のリフォームだとしても、誰に依頼するかで物件の運命がはっきり分かれます。
今回のリノベーションは、二宮町にある「山岸工務店」の山岸徹さんに依頼をしました。山岸さんはデザインセンスはもちろんの事、建材へのこだわりと目利きが素晴らしく、妥協を許さない職人さんです。
作業中の山岸さん
【リノベーションによるビフォーアフター】
オンリーワンであること、スペシャルであること
賃貸のリフォームと言ったら何をイメージしますか?壁紙の張替えでしょうか?このお部屋は、壁紙の張替えはしていません。壁紙の上に、漆喰を塗っています。
賃貸の入居者に気に入ってもら為にグレードアップする事といったら何をイメージしますか?
エアコンの取り付けですか?温水洗浄便座?インターネットwi-fi?
このお部屋は、それらは何も付いていません。
それでも選ばれました。直ぐに成約となりました。家賃も上げられました。
それらの設備はあるに越した事はありませんが、古いアパートは、新築・築浅アパートの様な設備仕様を真似したって、勝てないのです。であれば、それら設備に投資をせずに、一般的な賃貸アパートには無い部分を特化させるべきです。
壁に貼り付けられた板はスギのシャビー仕上げ、鏡や造作物などは廃材などを利用してリメイクしています。限られた予算内で最大限に魅力的にみせる為の工夫です。
木目の風合いが美しい。
リンナイでもこういったデザイン性の高い商品があります。縦型コンロにする事によって、調理作業スペースを広くしています。
漆喰の風合い。
壁紙は張り替えずにペイントしました。元々ある多少の汚れだって、こうしてしまえば目立たなくなります。工夫とアイデア次第で低予算で空間を激的に変えられる。
出窓カウンターは合板の上からmortexを塗りました。モールテックスはニュアンス、デザイン性、質感、エフェクトなどを兼ね揃え、リノベーションに使うのに抜群の相性の良さを発揮します。
ナラフローリングに対してタモ材の框収め。無い物は製材から加工して作ります。玄関土間はCF(クッションフロア)ではありません。擬木タイルのヘリンボーン。意匠仕上げ。
このお部屋一番の主役はこのナラの無垢フローリング。丁寧に蜜蝋waxで仕上げられたナラ材の肌触りは極上です。ずっと居座りたくなるのです。一般的な賃貸アパートではこの様なフローリングは使われません。スペシャルです。このナラ材は二宮町の城所材木店で仕入れた物で、店主の計らいでイイモノを提供して頂いたそうです。
面白いかどうか、付加価値がつくかどうか
山岸さんはおっしゃった。
「俺は普通のリフォームは依頼されてもやらない。面白いかどうか、誰からの依頼か、付加価値が付くかどうかで仕事を決める。今回は長期間空いていた空室に付加価値を付けるという宮戸君と俺の方向性が一致した。このプロジェクトを通して新たな発見や思いが生まれたのが良かったと思う。」
空室に付加価値を!可能性に満ちている二宮町
二宮町内には何年間も空室のままの古いアパートがたくさんあります。それでも次々と建築される新築アパート。賃貸経営で生き残っていく為には「選ばれる理由」を追求していく必要があります。
昨今の二宮町内の賃貸リノベーションの成功事例を挙げると、二宮団地があります。神奈川県住宅供給公社が行った二宮団地再編プロジェクトは、築50年以上経過し空室だらけになった団地をリノベーションして再編する企画です。二宮団地がある「百合が丘」は、駅から遠く坂があるので少し不便な場所です。それでもこの再編プロジェクトによって多くの入居者を誘致させる事に成功させました。
二宮団地は、エアコンも温水洗浄便座もモニター付インターフォンも付いていません。選ばれる理由が最新の設備では無いという事が分かると思います。自然豊かな二宮町の「さとやまライフ」やコミュニティの魅力をお部屋のリノベーションを通して伝えているのです。この成功事例は、二宮町内にある空きアパート全てに当てはまる賃貸経営のヒントです。
この数年間、二宮町の人口は減少傾向にありますが、近年では転入者数が転出者数を上回る転入超過の状況が続いています。二宮町へ移住してくる人の多くは、二宮町の環境を気に入って来られるのです。最新の設備を求めて来る訳ではありません。地元の私達は、私達の日常がスペシャルである事に気付いていない人も多いのです。
空室はチャンスです。胸を張ってご自身のお部屋を紹介しましょう。期待を持って二宮町を訪れる人に喜んでもらえるお部屋にしましょう。この町での生活を楽しみにしている人がたくさんいらっしゃいます。特別なお部屋で「おもてなし」をしませんか?
空室をあきらめないで!
二宮町は可能性に満ちている。
店長:宮戸 淳
Portrait : Hiroshi Yahata(八幡 宏)