【対談】二宮くらし②~人が人でいられる場所~|コーヒースタンド「旅花」

二宮駅から少し歩いた先にあるコーヒースタンド「旅花」。

ここは、ただコーヒーを飲む場所ではありません。

誰かと少し話したいとき、ふと立ち寄りたくなる場所です。

自然と人が交わる、そんな「場」がここにはあります。

 

「旅花」を営んでいるのは、

岩瀬俊彦さんと、奥さんの智子さん。

俊彦さんは、皆から「ゴリさん」と呼ばれています。

 

 

 

二宮に「入れた」という感覚

宮戸

旅花さんも、二宮に来てもう10年になりますね。

僕自身、旅花ができた時の衝撃をすごく覚えています。

 

カフェがなかった二宮に、こんな空気感のコーヒースタンドができるんだ、と。

そもそも、二宮に来ることになったきっかけは何だったんでしょうか。

 

 

智子さん

もともと平塚に住んでいて、古民家でシェアハウスを営んでいました。

ただ、建物の所有者の事情で、そのシェアハウスを閉じることになってしまって。

最初は同じような形をもう一度やりたいと思っていたんです。

古民家で、大広間があって、部屋がいくつかあって、そこに自分たちも住むような形で。

ただ当時は、民泊もまだ一般的ではなく、法整備も曖昧で、

「すぐに実現できる物件はなかなか見つからないな」と思って。

それで発想を切り替えて、事業用の物件として探し始めました。

その中で見つけたのが、この場所でした。

それと同時に、「今度はちゃんと不動産屋さんを通そう」と思っていて。

 

そんな中で出会ったのが、宮戸さんでした。

あれは本当にラッキーでしたね。

宮戸さんは最初は白シャツで、ちょっと印象的だったんですよ(笑)。

 

 

宮戸

最初にお問い合わせをいただいた時のことは、よく覚えています。

この物件は、ホームページの中を見ていかないと見つけにくい場所だったので、

「よく見つけてくれたな」というのが最初の印象でした。

実際にお会いしてお話を聞いたときに、

単なるコーヒー屋ではなく、

「コーヒー+ときどきお稽古事(イベント)」というコンセプトに、

当時すごくワクワクしたのを覚えています。

 

 

智子さん

それは本当にありがたかったですね。

店の物件だけじゃなくて、住む場所まで一緒に探してもらった。

あの時は本当に助かりました。

 

 

ゴリさん

だから、二宮に「住んだ」というより、「入れた」という感覚があるんです。

大家さんも、不動産屋さんも、僕らに対してすごく優しかった。

そういう人たちがいてくれたから、ここに根を下ろすことができたと思っています。

そのことには、今でもすごく感謝しています。

 

 

 

人をつないでくれた町

ゴリさん

宮戸さんは、その後もいろんな人を紹介してくれましたよね。

 

そうやって人と人をつなげてくれる動きが、この10年でちゃんと花開いてきている感じがします。

宮戸さんが紹介してくれた人で、今まで仲悪くなった人が一人もいないんです。

それって、すごいことだと思うんですよね。

たぶん、ただ繋いでいるわけじゃなくて、

「この人とこの人は合いそうだな」とか、ちゃんと見ているんだと思うんです。

だから無理がないし、自然と続いていく関係になる。

 

 

宮戸

そう言っていただけるのは嬉しいです。

僕としても、お二人に出会って、

「この人たちには、いい場所もいい住まいも紹介したい」と自然に思いました。

紹介する時も、条件だけではなく、その人の雰囲気やこれからやりたいことを見ながら、

無理のない形でつながるように意識しています。

それが、長く続く関係になっていたら嬉しいですね。

 

 

 

旅花に集まる人たち

宮戸

実際に旅花を始めてみて、どんなお客さんが多いなと感じますか?

 

 

智子さん

個人活動している人が多いですね。

一人でふらっと来て、少し話していく。その話が、案外おもしろかったりするんです。

 

 

ゴリさん

あと印象的なのは、家族の話をあまり持ち込まない人が多いことですね。家族がいても、その話をしない。

ここではそれぞれが、一人の人として時間を過ごしている感じがあるんです。

 

 

宮戸

ただコーヒーを飲みに来るというよりは、「誰かと話しに来る」場所になっていますね。

 

智子さん

そうですね。特にコロナ禍の時は強く感じました。

一人暮らしの人なんかは、誰とも話さない日が続いてしまう。そういう中で、他愛もない話ができる場所って大事なんだなと。

「ばか話ができる場所」としての役割も、旅花にはあったのかもしれません。

 

 

宮戸

旅花は、私にとって「心のオアシス」なんですよ。

忙しい時でも、ふらっと来て少し話すだけで、

すっと気持ちが整うというか。

そういう場所って、なかなかないなと思っていて。

 

 

智子さん

それは嬉しいです(笑)。

でも、私たちにとっても旅花はそういう存在なんですよ。

 

 

 

二宮の「品の良さ」と懐の深さ

宮戸

旅花に集まる人たちを見ていて、二宮らしさを感じることはありますか?

 

 

智子さん

ありますね。

みんな、すごく品がいいんです。

意見が違っても、「あなたはそう思うんだね、私は違うけど」と、お互いを尊重できる。議論が紛糾して、ぶつかり合うようなことがあまりないんです。

熱くなりそうになっても、自然と少し距離を取る。その感じがすごくいいなと思っています。

 

 

ゴリさん

それって、二宮という町の空気にも通じている気がします。

二宮って、いろんな人を受け入れる町なんですよね。僕たちもそうやって受け入れてもらった側ですし。

 

 

智子さん

海の近くなのに、いわゆるサーフカルチャー一色でもない。山が近いけど、山カルチャー一色でもない。

何か一つの価値観で染まっていないんです。

その「何でもない」感じが、実はすごく懐が深いんだと思います。

 

 

宮戸

「何でもない」が懐の深さにつながっている、というのは面白いですね。

 

 

智子さん

そうなんです。

どこかの町だと、「この分野はこの人」みたいなヒエラルキーがあったりするじゃないですか。

でも二宮は、そういう感じがあまり強くない。

人と人として向き合える感じがある。それが二宮らしさなんじゃないかなと思います。

 

 

 

外に出るとわかる、二宮の良さ

宮戸

暮らしていて、二宮の好きなところはどんなところですか?

 

智子さん

やっぱり、人と人でいられるところですね。

都会に行くと、なんだか人と人じゃなくなってるな、と感じることがあるんです。

機械のように処理されていく感じというか。

 

 

ゴリさん

だから、外に出た時に逆にわかるんですよ。

「ああ、二宮っていいところだったんだな」「守られていたんだな」って。

 

 

智子さん

相手に気をつかえる、ピュアな人が多い。

繊細な人でも暮らしやすい町なんじゃないかと思います。

 

宮戸

それはすごくわかります。

僕自身も繊細なところがあって、ひとつクレームがあるだけでかなりえぐられるタイプなので、二宮という町に助けられている部分はあると思います。

 

 

ゴリさん

そういう人にとって、二宮には可能性があると思いますよ。

ちゃんと人として接してくれる人がいる町ですから。

 

 

 

 

二宮で感じる不便さ

宮戸

逆に、二宮で暮らしていて不便だなと感じることはありますか?

 

ゴリさん

この前の雪の日は大変でしたね。

東名も小田厚も西湘バイパスも止まって、車が国道1号や246に流れ込んで、大渋滞になった。

普段は交通アクセスが良くて便利なんですけど、いざ何かあると、そのしわ寄せが一気に来る場所でもあるんだなと実感しました。

 

宮戸

温暖な地域だから、滅多に雪が積もらない。

でも、いざ積もった時の備えはそんなに強くない。除雪体制も十分ではないし、そこは脆さかもしれません。

 

ゴリさん

あとは、災害時の水源のことも少し気になります。

昔は防災井戸がもっとあったのかもしれないけれど、今は減ってきていて。

災害時のことを考えると、地域で共有できる水源がもっとあると安心だなと思います。

 

あと、病院のこともありますね。

大磯病院があるとはいえ、そこだけに頼るのも不安ですし、高齢の方や足の悪い方には負担が大きい。

小児科や皮膚科など、科によって選択肢が少ないという話もよく聞きます。

 

智子さん

銀行も、メガバンクが少なくて少し不便ではあります。

でも、全体としては「あるもので工夫して暮らす」感じですね。不満ばかりでは住めない町なので、それも含めて楽しんでいる気がします。

 

 

 

 

「あるもので工夫する」日常

宮戸

お二人の二宮での日常って、どんな感じなんですか?

 

ゴリさん

そんなに特別なことはしていないですよ。

買い物して、食材を料理して食べる。そういう普通の暮らしです。

直売所で野菜を買ったり、SEIYUに行ったり。

あるもので工夫しながら暮らす、みたいな感覚というか。

何か特別なことをしなくても、日常の中で楽しみを見つけられる感じです。

 

智子さん

休みの日も、自営業なのできっちり分かれているわけではないんですけど、

少し時間ができた時に、前は箱根の方によく行っていました。

二宮に来て、温泉地がすごく近くなったなと感じましたね。

ちょっと気分を変えたい時に、ふらっと行ける距離にあるのがいいなと思います。

 

ゴリさん

逆に、みんな休みの日に何をしているのかというと、

ここで見ている限り、旅花に来ている人が多いですね(笑)。

コーヒーを飲みに来るというより、

ちょっと話しに来る、みたいな感じで。

そういう過ごし方も、この町らしいなと思います。

 

 

 

観光よりも、人に会いに行く旅

宮戸

お二人は、旅行もよくされていますよね。

 

智子さん

はい。でも、いわゆる観光をしに行くという感じではないですね。

人に会いに行く旅が多いです。

その土地で暮らしている人が、どんなふうに生きているのか。

そこに一番興味があるんです。

景色や有名な場所を見るよりも、

その人の話を聞いたり、一緒に過ごしたりする方が、印象に残るというか。

 

 

ゴリさん

だから、知り合いを訪ねたり、その先でまた誰かに出会ったり。

その人の紹介で、また別の人に会って、

観光地を回るより、そういう旅のほうがしっくりきます。

 

 

智子さん

そして、その出会いがまた旅花につながっていったりもする。

 

 

ゴリさん

そうやって全部が少しずつつながっていく感じですね。

 

 

 

 

これからやってみたいこと

宮戸

最後に、これから先、やってみたいことやビジョンがあれば教えてください。

 

ゴリさん

まずは、宮戸さんのお話会を旅花でやりたいですね。

今回はインタビューされる側でしたけど、今度はこっちが質問攻めにしたいです(笑)。

 

宮戸

それはちょっと緊張しますね(笑)。

 

智子さん

でも、これまでも不定期でいろんなイベントをやってきたので、またそういう場は作っていきたいです。

以前、太平洋不動産さんと一緒に「レトロ物件を探すお散歩」の企画もやりましたよね。ああいうのもすごく面白かったです。

 

宮戸

あれは本当に面白かったですね。第2弾もやれたらいいなと思っています。

 

ゴリさん

そうですね。

これからは、宮戸さんとも、もっと遊んでいきたいなという感じです。

せっかく同じ町にいるんだから、一緒に何か面白いことをやっていけたらいいですよね。

 

宮戸

ありがとうございます。嬉しいです。ぜひまたご一緒させてください。

 

 

 

 

何でもない時間の豊かさ

店をつくることから始まったのではなく、

人と人の関係から自然と生まれた場所。

だからこそ、この店には無理がなく、

誰かがふと立ち寄る場所として、この町に馴染んでいるのかもしれません。

二宮での暮らしは、特別な何かがあるわけではない。

けれど、ここには、

“何でもない時間”を誰かと分け合える心地よさがある。

 

そのことを、旅花は静かに教えてくれました。

 

 

Photo:写真館じゅんじゅん

 


旅花

Tabihana Coffee Stand

コーヒーの先に、会話がある場所。

この町を訪れたら、ぜひ立ち寄ってほしい場所のひとつ。営業日や最新情報は、Instagramをご確認ください。

Instagramはこちら